小笠原固有トンボ類の保全(2004ー)

 小笠原諸島には5種類の固有トンボが生息していますが、その中でも「オガサワラトンボ」と「オガサワラアオイトトンボ」、「ハナダカトンボ」の3種類は特に個体数が少なく、環境省の保護増殖事業の対象種となっており、さまざまな保全活動が進められています。

*トンボ生息調査

 小笠原固有トンボ類が生息する「兄島」と「弟島」という無人島で、毎年決まった沢を上流から下流までくまなく踏査し、5種類の固有トンボの目撃数を記録しており、その変動を比較検証できるようにしています。(2014-環境省委託事業として受託)

写真:調査風景

写真:オガサワラアオイトトンボ(現在では弟島にわずかに生息するのみ)

写真:ハナダカトンボ(天然記念物。兄島と弟島では生息数が比較的安定しているが、母島では激減している)

*人工トンボ池の設置と整備

 渇水期のトンボの産卵地確保を目的として、兄島、弟島、西島に、合計約100基の人工トンボ池(大型のプラスチック桶)を設置しています。毎年すべての人工池を周り、プラスチックの劣化具合や割れのチェック、不具合のあった桶の回収・交換、水質悪化を防ぐための枯れ葉除去、トンボの幼虫であるヤゴの利用確認などを行っています。

 毎年、止水性の「オガサワラトンボ」や「オガサワラアオイトトンボ」のヤゴが確認できており、その有用性が実証されています。

写真:兄島に設置した人工トンボ池

*シュロガヤツリの駆除

 弟島には5種全ての固有トンボが生息していますが、一方で特定の沢において、外来植物である「シュロガヤツリ」が水面を覆うように繁茂しており、トンボの産卵に悪影響を与えているといわれています。そこで、弟島内で特に広範囲にシュロガヤツリが繁茂する沢において、産卵期に沢周囲のシュロガヤツリの刈り払い作業を行っています。生態系にどのような影響を与えるかわからないので、農薬等を容易に使用することはできません。これまでは手作業での刈り払いを行っており、1ヶ月ほどですぐに再生してしまっていました。

 2021年からトンボの夏季に2回の刈り払いを行うことで、トンボの産卵期間中水面が開けた状態を維持することに成功しました。さらに2022年からは独自事業として弟島内の別の沢にも駆除活動の範囲を広げ、刈り払いだけでなく防草シートを用いた生長抑制を試験的に実施しています。効率的な駆除方法や生長抑制方法を試行錯誤しながらトンボの生息環境を改善するために活動しています。

写真:シュロガヤツリ刈込前後の様子(遠景)

写真:シュロガヤツリ刈込前後の様子(近景)

写真:作業風景

※この活動の一部はGGG(公益社団法人 ゴルフ緑化促進会)様の国立・国定公園支援事業(令和2~4年度)と

公益財団法人 公益推進協会様の自然公園等保護基金(令和5年度)を活用させていただいております。