チチジマヒメカタゾウムシの保全(2023ー)

ヒメカタゾウムシ類

 ヒメカタゾウムシ類は飛翔能力を退化させ、小笠原諸島の各島でその環境に合わせて種分化した昆虫であり、適応放散が見られる小笠原を代表する昆虫です。現在小笠原諸島において13種6亜種(故森本桂氏2015)に分類されていることが分かっていますが、特に樹上性のオガサワラヒメカタゾウムシ類は、外来爬虫類であるグリーンアノールの食害を受けやすい昆虫のひとつで、父島や母島ではすでにその影響で壊滅的な被害を受けており、絶滅が危ぶまれています。

 近年少しずつ研究が進んでいるものの生態的に不明な部分が多くその認知度も低いため、人知れず絶滅に向かっている昆虫でもあります。中でも「チチジマヒメカタゾウムシ」はグリーンアノールが蔓延し、固有昆虫のほとんどが絶滅してしまった父島において、じつはまだ守れるかもしれない昆虫のひとつなのです。

写真:チチジマヒメカタゾウムシ

写真:オトウトジマヒメカタゾウムシ

写真:アニジマハダカスジヒメカタゾウムシ(父島ではすでに絶滅したと考えられている)

図:ヒメカタゾウムシ亜族(Celeuthetina)一覧

局所的グリーンアノール対策保護ネットの試作

 チチジマヒメカタゾウムシは、かつては父島全域に生息していましたが、現在は山域の極めて限られた地域にのみ残存しています。

 本種は幼虫の間は地中で過ごし、5月から8月の間に成虫として地上で活動しますが、利用する食樹が限定されており、活動範囲も小さいです。昼夜を問わず活動することが分かっており、そのことが絶滅を免れている要因だと考えられていますが、専門家の調査によると父島での確認数は年々減少していることが分かっています。

 当会では、父島で激減している本種を保全する取組みとして、本種が確認された樹木に対し、グリーンアノールの侵入を防ぐためにその食樹ごと保護ネットで覆う試みを行い、その有用性を検証しています。

写真:保護ネット設置の様子

 有人島の身近な場所に、まだ保全できる固有昆虫が生息していることは意外と島民の方々に知られていない現状があり、この活動を少しずつ広めていきたいと考えています。

※この活動の一部は一般社団法人abt(アクト・ビヨンド・トラスト)様からの助成金(令和5年度)を活用しています。